SNS研修に使える助成金とは?人材開発支援助成金の対象・申請の流れ・活用ポイントを解説

企業のSNS人材育成

SNS研修に使える助成金とは?人材開発支援助成金の対象・申請の流れ・活用ポイントを解説

企業がSNSを活用する機会が増える一方で、「担当者だけに運用ノウハウが集中している」「投稿はできても成果につながる設計ができない」「炎上や著作権、広告表示のルールまで教育できていない」といった課題も生まれています。

こうしたSNS担当者の育成を目的とする研修では、研修内容や事業目的、受講者、実施方法などの要件を満たした場合、厚生労働省の人材開発支援助成金を活用できる可能性があります。

SNS研修であれば自動的に助成対象になるわけではありません。職務との関連性や訓練時間、実施形態、申請時期などによって判断されるため、研修契約前の確認が重要です。

SNS研修で検討できる人材開発支援助成金とは

人材開発支援助成金は、事業主などが雇用する労働者に対し、職務に関連する専門的な知識・技能を習得させるための職業訓練などを計画に沿って実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部などを助成する制度です。

現在は、人材育成支援コース、人への投資促進コース、事業展開等リスキリング支援コースなどを含む複数のコースが設けられています。企業のSNS担当者向け研修を検討する場合も、単に「SNSの使い方を学ぶ」だけではなく、担当業務に必要な職業能力を高める訓練として位置付けられるかが重要になります。

SNS研修で考えたい基本線

SNS運用の知識を趣味として習得する研修ではなく、企業の広報、マーケティング、採用、販売促進、顧客コミュニケーションなどの業務に必要な知識・技能を体系的に習得する研修として設計されているかを確認します。

たとえば、企業アカウントの戦略設計、投稿企画、コンテンツ制作、分析・改善、広告運用、リスク管理などを業務として担当している従業員に対する研修であれば、職務との関連性を説明しやすくなる場合があります。

SNS研修と相性を確認したい主なコース

人材開発支援助成金には複数のコースがあります。SNS研修で検討する際は、研修内容だけでなく「なぜその研修を行うのか」「会社がどのような事業・業務に活用するのか」によって確認すべきコースが変わります。

コース 主な考え方 SNS研修との関係を考える例
人材育成支援コース 職務に関連する知識・技能の習得を目的とする訓練などを支援 SNS広報、SNSマーケティング、動画制作、分析など、現在の担当業務に関連した研修
人への投資促進コース デジタル人材育成、定額制訓練、自発的な能力開発など複数の訓練メニューを支援 対象要件を満たすデジタル人材育成や、複数の教育コンテンツを学べる定額制研修など
事業展開等リスキリング支援コース 事業展開やDX・GXなどに伴い新しい分野で必要となる知識・技能の習得を支援 新たにSNSを販売・集客チャネルとして本格導入するなど、事業変化に伴う人材育成

人材育成支援コース

現在担当している仕事に必要なスキルを高める研修で、まず確認しやすい選択肢の一つです。厚生労働省では、職務に関連した一定時間以上のOFF-JTなどを対象とする訓練メニューを設けています。

SNS担当者であれば、アカウント運用、企画、撮影・編集、分析、広告、コミュニティ対応、リスク管理などを一連の業務として習得する研修が考えられます。

人への投資促進コース

デジタル分野などを含む人材育成を後押しするコースです。高度デジタル人材訓練、情報技術分野認定実習併用職業訓練、定額制訓練、自発的職業能力開発訓練など、複数のメニューがあります。

SNS研修がこのコースに該当するかは、単に研修をオンラインで受講するかどうかでは決まりません。各訓練メニューに定められた対象者・訓練内容・教育機関・費用・実施方法などの要件を個別に確認する必要があります。

事業展開等リスキリング支援コース

新規事業の立ち上げなどの事業展開や、DX・GXに対応するため、新しい分野で必要となる知識・技能を従業員に習得させる場合に検討されるコースです。

たとえば、従来は店舗販売を中心としていた企業が新たにデジタルマーケティングを強化し、SNSを重要な集客チャネルとして運用するため担当者を育成する場合などは、事業上の変化と研修目的の関係を整理して確認することが重要です。

助成率だけでコースを選ばない

一部の訓練では比較的高い経費助成率が設定されていますが、希望するコースを自由に選べるわけではありません。企業規模、訓練目的、受講者、訓練形式、事業展開との関係などによって適用条件が異なります。

どのようなSNS研修が対象になりやすいのか

SNS研修という名称そのものではなく、研修で習得する知識・技能と従業員の職務との関係が重要です。

そのため、「SNSの基礎知識」だけで終わる研修より、企業の実務に必要な能力を体系的に身につけられるカリキュラムのほうが、人材育成の目的を説明しやすくなります。

1

SNS戦略設計

目的設定、ターゲット設計、媒体選定、KGI・KPI設計、運用方針など。

2

コンテンツ企画・制作

企画立案、文章作成、撮影、短尺動画、クリエイティブ制作など。

3

分析・改善

各種指標の読み方、投稿評価、仮説立案、改善サイクルなど。

4

リスク管理

炎上予防、著作権、肖像権、個人情報、広告表示、社内ルールなど。

企業向けSNS研修で扱いやすいテーマ例

  • 企業SNSの運用戦略とアカウント設計
  • 投稿企画とコンテンツカレンダーの作成
  • 短尺動画の企画・撮影・編集
  • ユーザーに伝わる文章・構成の作り方
  • SNS上の反応や各種指標の分析
  • 改善施策の立案と運用サイクル
  • SNS広告の基礎知識
  • 著作権・肖像権・個人情報などのリスク管理
  • 炎上発生時の初動と社内エスカレーション
  • 複数SNSを連携させたコンテンツ運用

特に企業でSNSを内製化する場合は、「投稿方法を覚える研修」に限定せず、企画から制作、投稿、分析、改善、リスク管理まで一連の業務を理解できるカリキュラムにすると、研修後の実務にもつなげやすくなります。

SNS研修が助成対象になるか考えるときの重要ポイント

1.研修内容と職務に関連性があるか

人材開発支援助成金は、基本的に労働者の職業能力開発を支援する制度です。そのため、SNS研修の内容と受講者の担当業務との関連性を整理しておく必要があります。

たとえば、広報担当者が企業SNSの運用方法を学ぶケースと、SNSを業務で使用しない従業員が一般教養として受講するケースでは、制度上の評価が同じとは限りません。

2.訓練時間の要件を確認する

コースや訓練メニューによって、必要となる訓練時間や実施条件が定められています。短時間の単発セミナーだけでは条件を満たさない可能性があります。

SNS研修を設計するときは、単純に時間を長くするのではなく、基礎、戦略、企画、制作、分析、リスク管理などを体系的に学べる構成になっているかを確認することが重要です。

3.OFF-JTとして認められる内容か

助成対象となる訓練では、通常の業務を離れて行うOFF-JTなど、制度で定められた訓練方法が求められるケースがあります。

実際の企業アカウントを操作しながら通常業務として投稿を作る時間と、講師から知識・技能を体系的に学ぶ研修時間は、同じ扱いになるとは限りません。実務と研修を明確に区分できる設計が重要です。

4.研修費を企業が適切に負担しているか

厚生労働省は、人材開発支援助成金について「訓練経費は無料になりません」と注意喚起しています。助成金を前提として実質無料をうたう研修や、不自然な返金・値引きを伴うサービスには注意が必要です。

5.申請前に研修を始めない

人材開発支援助成金では、原則として訓練開始前に必要な計画・手続きを行うことが重要です。研修契約や受講を先に進めてから「後から助成金を使いたい」と考えても対応できない場合があります。

人材開発支援助成金を利用する基本的な流れ

実際の申請方法や期限は利用するコースによって異なりますが、SNS研修で助成金を検討するときは、概ね次の順番で準備すると整理しやすくなります。

01

自社の人材育成課題を整理する

「投稿本数を増やしたい」だけではなく、戦略設計ができない、分析が属人化している、動画制作ができないなど、解決したい能力課題を明確にします。

02

研修対象者と職務を整理する

誰が受講するのか、その従業員が現在どのような業務を担当しているのか、研修後にどの業務で活用するのかを整理します。

03

研修カリキュラムを確認する

研修時間、講師、実施方式、カリキュラム、受講料などを確認し、職務に必要な能力を体系的に習得できる内容かを確認します。

04

利用可能なコースを確認する

自社の事業内容、企業規模、研修目的、対象者などを基に、どのコース・訓練メニューに該当する可能性があるか確認します。

05

訓練開始前に必要な手続きを行う

必要書類や提出期限を確認し、管轄の労働局などへ計画関係の手続きを行います。電子申請を利用する場合はGビズIDなどの準備も確認します。

06

計画どおり研修を実施する

出席・受講記録、実施日時、研修内容、支払いを証明できる資料など、支給申請に必要となる記録を適切に保存します。

07

研修終了後に支給申請する

定められた期限までに必要書類をそろえて支給申請を行います。申請後は審査を経て、要件を満たす場合に助成金が支給されます。

申請様式は更新されることがあります

人材開発支援助成金は年度途中にも制度改正や様式変更が行われることがあります。実際に申請するときは、過去に保存した様式ではなく、計画届・支給申請を行う時点で厚生労働省が公開している最新情報を確認してください。

SNS研修を「助成金ありき」で設計しないほうがよい理由

助成金を活用できれば企業の教育コストを抑えられる可能性があります。しかし、SNS研修の目的を「助成対象になること」に置いてしまうと、研修後に現場で使えない知識だけが残ることがあります。

SNSは、知識を聞くだけで運用できるようになる領域ではありません。企画を作り、コンテンツを制作し、公開後の数字を分析し、次の施策を改善するところまで繰り返して初めて実務能力として定着していきます。

知識だけを学ぶ

用語や機能は理解できても、自社アカウントで何を投稿するべきか判断できない状態が残りやすくなります。

実務まで設計する

自社の目的、ターゲット、投稿企画、制作、分析を研修内容と接続すると、研修後の運用に移行しやすくなります。

運用体制まで作る

担当者、承認フロー、投稿ルール、分析方法まで決めることで、担当者個人への属人化を減らしやすくなります。

そのため研修を選ぶ際は、助成金対応の有無だけではなく、研修後に企業が自力でSNSを運用・改善できる状態まで想定されているかを見ることが重要です。

企業向けSNS研修会社を選ぶときのポイント

SNS運用の実務を理解しているか

SNSは機能や投稿方法を知っているだけでは成果につながりません。企業アカウントの目的設計、企画、制作、投稿、分析、改善まで実際の運用工程を理解している講師・研修会社かを確認します。

特定のSNSだけでなく全体戦略を設計できるか

企業によって適したSNSは異なります。また、1つのSNSだけに依存するより、コンテンツを複数媒体へ展開したほうが効率的な場合もあります。

そのため研修では、個別機能だけでなく、各SNSの役割、ユーザー特性、コンテンツ形式、検索との関係などを比較しながら媒体を選択できる力を身につけられるかも重要です。

研修と実際の運用支援を切り分けられるか

SNSを完全に内製化することが必ずしも最適とは限りません。戦略設計や分析は社内で行い、動画編集など一部業務を外部へ委託する方法もあれば、立ち上げ期だけ運用支援を受け、徐々に内製化する方法もあります。

研修とSNS運用支援の双方を理解している事業者であれば、「全部外注」「全部内製」の二択ではなく、自社の人数や経験に合わせた役割分担を設計しやすくなります。

企業アカウント特有のリスクまで扱っているか

企業SNSでは、著作権、肖像権、個人情報、広告表示、従業員の出演、コメント対応、炎上時の初動など、投稿制作以外にも確認すべき項目があります。

「伸ばし方」だけではなく「安全に継続する方法」まで研修内容に含まれているかを確認しておくと、社内運用へ移行した後のリスクを抑えやすくなります。

助成金の対象可否を断定していないか

助成金の支給可否を最終的に判断するのは研修会社ではありません。自社の状況を確認する前から「必ず使える」「実質無料になる」などと断定する事業者より、制度要件を説明し、必要に応じて労働局や専門家への確認を案内する事業者のほうが安心です。

SNS研修後に成果を残すための運用体制

SNS研修の本当の成果は、受講した時点ではなく、受講後に自社の運用が変わったかどうかで判断する必要があります。

担当者個人ではなくチームに知識を残す

SNS運用を一人の担当者だけに任せると、その担当者が異動・退職した際に運用が止まる可能性があります。研修内容や運用ルールをマニュアル化し、企画・制作・承認・分析の役割を複数人で共有できる状態を作ることが重要です。

投稿数だけをKPIにしない

投稿本数は管理しやすい指標ですが、SNS運用の目的そのものではありません。認知、サイト流入、問い合わせ、採用応募、購入など、SNSを活用する目的に応じて見る指標を変える必要があります。

研修と運用支援を組み合わせる方法もある

研修を受けた直後から、社内だけで高品質な投稿を継続することが難しい企業もあります。その場合は、社内担当者が戦略・企画・判断を担い、撮影、編集、投稿制作、分析などの一部をSNS運用の専門会社と連携する方法も現実的です。

外部支援を利用しながら社内に知識を移し、徐々に内製化する設計であれば、運用を止めずに担当者を育成できます。反対に、社内の人員が限られている場合は、無理に完全内製化せず、重要な判断部分だけを社内に残す方法もあります。

SNS研修のゴールは「受講」ではなく「運用できる状態」

研修、実践、分析、改善を一つの流れとして設計し、担当者だけでなく組織にSNS運用の知識を残すことが、長期的な成果につながります。

SNS研修と助成金に関するよくある質問

Q.SNS研修なら人材開発支援助成金を必ず利用できますか?

いいえ。SNS研修という名称だけで対象になるわけではありません。職務との関連性、研修内容、訓練時間、受講者、研修機関、企業規模、申請時期など、利用するコースごとの要件を満たす必要があります。

Q.オンラインのSNS研修でも対象になりますか?

eラーニングやオンライン形式の訓練も制度上対象となる場合があります。ただし、受講管理方法や訓練内容、実施方法など個別の条件があります。オンラインであるという理由だけで対象になるわけではありません。

Q.短時間のSNSセミナーでも利用できますか?

利用するコース・訓練メニューによって必要な訓練時間などが定められています。数時間の単発セミナーでは要件を満たさない場合があるため、申請前に確認が必要です。

Q.SNS運用代行の料金も助成対象になりますか?

SNSアカウントの投稿作成・運用代行そのものと、従業員の職業能力開発を目的とした訓練費用は性質が異なります。運用代行費用まで研修費として扱えるとは限らないため、研修契約と運用支援を明確に区分して確認することが重要です。

Q.研修を始めた後から申請できますか?

原則として訓練開始前の計画・手続きが重要です。受講開始後では利用できない場合があるため、研修日程を決定する前の段階から最新の申請要件を確認するのが安全です。

Q.助成金を使えば研修費は無料になりますか?

助成対象となる場合でも、通常は事業主が研修費用を適切に負担したうえで支給申請を行います。厚生労働省も「訓練経費は無料になりません」と案内しているため、「必ず無料になる」といった説明には注意が必要です。

まとめ|助成金の確認とSNS人材育成はセットで考える

企業のSNS運用では、投稿作業だけでなく、戦略設計、企画、制作、分析、改善、リスク管理まで幅広い知識が求められます。担当者任せの運用から脱却するためには、こうした能力を体系的に学ぶ研修が有効です。

企業向けSNS研修については、内容や事業目的などによって人材開発支援助成金を活用できる可能性があります。一方で、SNS研修であれば一律に対象となる制度ではないため、利用するコースの要件を事前に確認し、訓練開始前から適切な準備を進める必要があります。

また、研修の目的を助成金の受給だけに置くのではなく、研修後に自社でSNSを運用・改善できる体制を作れるかという視点も欠かせません。必要に応じてSNS運用の外部支援と人材育成を組み合わせながら、社内に知識と判断基準を蓄積していくことが、継続的なSNS活用につながります。

制度確認に利用できる公的情報

※制度内容、助成率、支給額、申請様式、期限などは改正される場合があります。実際の申請時には、厚生労働省・管轄労働局が公表する最新情報をご確認ください。

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